logo人間学群心理学類

受験生へのメッセージ

心理学を志す“きっかけ”

八斗啓悟(2018年度入学)

 これを読んでいる皆さんは,少なからず心理学への興味をもっている方だと思います。その“きっかけ”は何だったでしょうか?心理学の研究を推し進めてきた偉大な研究者達の“きっかけ”には興味深いものがあります。

 フロイトの弟子として無意識の研究を行った著名な心理学者としてカール・ユングがいます。ユングは10代から自分の中に二つの人格があることを感じていたそうです。その人格の一つは老賢者といって,後々ユングが提唱した元型に通ずるものでした(元型等の詳しい説明は省きますが,要するに自身が抱えていた問題が“きっかけ”となり後々の功績に繋がったということです)。

 また,スティーブン・ヘイズは, ACT(アクト)と呼ばれる革新的な心理療法を産み出し,現在,臨床心理学領域において最も影響力がある研究者とされています。そんなヘイズですが,ACTを開発する“きっかけ”は,パニック症を患っていた自身の過去にありました。ヘイズは,死すら意識するパニック発作への不安や恐怖から逃げ続け,苦しい日々を過ごしていたようです。しかし,この時のどんなにあがいても何も変わらなかった自身の経験から,「不安や恐怖を避けようとすることこそが苦悩の原因である」というACTの根幹的な思想に至りました。

 以上のように,自身の経験や苦悩を“きっかけ”に研究を重ね,功績を残していった心理学者は多いように思います。もちろん何か功績を残さなければならない訳ではありませんが,心理学類の学生も,上述の2名の学者のように自身の関心や課題に従って研究を行い,自身が課した問いに対しての一定の答えを得て,卒業していくように思えます。そして中には私のように大学院まで研究を進める者もいます。これはいかに心理学が身近な学問であるかを表しているように感じます。恐らくこれを読んでいる皆さんも心理学に興味をもった“きっかけ”は身近なものだったのではないでしょうか。心理学類には,その“きっかけ”を学問の遡上にあげ,方法論を示してくれる先生方と,ともに学ぶ仲間が必ずいると思います。どの道を選ぼうと皆さんの“きっかけ”が,実りある大学生活に繋がることを願っています。

進路選択に迷っているあなたへ

長濱奈甘乃(2020年度入学)

 小さな島の端っこで育った好奇心旺盛な私は、進路選択にとても迷いました。心理学を学びたいけれど、英語や科学全般にも興味があり、進路選択のための情報源が少なく、将来の仕事も心配で…。そんな中、「つくばの心理学」を読み、ここだ!と思いました。カウンセリングから動物実験まで幅広く心理学を学べて、他学類の授業も 受けられるところに魅力を感じました。

 公認心理師になりたいと思いつつ、起業や研究の道にも関心があり、ワクワクと同時にやりたいことを絞れるか不安でした。入学してみると、コロナ禍で約3年間オンライン授業という想像とは大きく異なる大学生活になりましたが、だからこそ多くの先生にご指導いただきながら、大学内外で様々な経験を積むことができたように思います。

 心理や起業入門の授業を受けたり、課外活動やリサーチインターンに参加したりする中で、「やりたくないこと」や「自分の得意ではないこと」が明確になりました。「すごく面白いけど、数年間続けるのは違うかも」「学ぶのは楽しいけれど、この分野で新たな知見を生み出す自分は想像がつかない」「起業も面白いけど、自分が売り出したいモノはないなあ」…。自信がなくても、とにかく色々かじってみてわかったことは、その物事について知らないから迷うということです。大学選びに迷ったら、学生や先生のお話を聞いて、大学説明会に行って、実際にどんな大学生活になるか想像できるような情報をたくさん集めてみると良いかもしれません。情報が多すぎて興味関心がわからなくなったときは、やりたくないことリストを作ってみるのもおすすめです。

 卒業研究では、入学当初は縁がないと思っていたマウスの研究室に所属し、神経科学と心理学と障害科学の間のような研究をしました。英語論文を読み、生物や統計の知識を深めつつ、人対象実験の際には対人スキルも必要となるという、振り返れば、興味関心全てが総動員された大学生活でした。これから大学院で研究を続けますが、まだその先は決まっていません。心理学類は、経験豊かで学生に寄り添ってくださる先生や同じ関心を持つ学生とともに、わからないことは相談しながら興味を突きつめられる環境です。入学後の自分を想像しながら、情報を集めてみてください。皆さんが納得のいく進路選択ができるよう応援しています!

今、心理学類で学ぶことを諦めかけている方へ

菊地伶(2020年度入学)

 「中学生の頃から、筑波大学の心理学類で学びたいと思っていました」──これは、私が推薦入試の試験日から今日まで使い続けている常套句です。

 昔から「自分がこの発言を返したら、この友人はどう反応するのだろう?」「どうして皆同じような行動をするのだろう?」といったことに興味があり、それが”心理学”という学問に値すると知ったのは、小学校高学年の頃でした。そこから漠然と心理学を学べる大学に入りたいと思い始め、中学生の時に出逢ったのが、筑波大学の心理学類でした。

 心理学類では、心理学の実験・教育・社会・発達・臨床という5領域をまんべんなく学ぶことができます。そのため、文系・理系問わず、自分の好きな領域を思う存分探求できます。また4年間を通して、基礎知識の学習、演習・実験などによる実践、分析手法の修得、そして卒業研究と、心理学の0から100まで学べる環境が整っていることも魅力です。更に「他学類の科目を履修することができる」という点は筑波大学の大きな特徴ですが、心理学類はその自由度が高く、心理学に加えて、自身の興味に沿った学問を幅広く学ぶことができます。

 当時中学生だった私も、ここまで自由に、徹底的に学びを謳歌させてくれる点に心惹かれ、入学を決意しました。もちろん今も、心理学類の魅力はこれだと確信しています。

 さて、ここまで心理学類の魅力を語っている訳ですが、実は私自身、心理学類への入学は危ぶまれていました。模試は常にE判定、入試で必須の英語は最も苦手な科目。それでも諦めきれなかった私に残された道は、面接という形で直接想いを伝えることができる推薦入試だけでした。紆余曲折ありましたが、最終的には「5年間志望していた」という強い想いが伝わり、合格することができました。

 何が言いたいかというと、どうか最後まで諦めず、様々な角度から挑戦して欲しいということです。今、入学を諦めかけている方がいらっしゃるかも知れませんが、筑波大学は強い想いを拾い、育ててくれる場所だと思います。私の”無謀だった人間でも入学し、学びを深め、卒業できた”という体験で、少しでも悩んでいる皆さんの背中を押せたら嬉しいです。皆さんが納得のいく進路選択ができることをお祈りしています。