沸騰熱伝達の研究
沸騰熱伝達は,他の伝熱形態と比較して高い熱伝達率を持っています。
単相対流冷却の沸騰冷却への置き換えは,自動車をはじめとする各種機械・機器の電動化に伴う熱問題の解決,
データセンターやスーパーコンピュータの冷却に要する消費電力の大幅な低減,などにつながる重要な課題です。
しかし,沸騰は複雑な熱流体現象であるため,従来の方法では精密な実験・数値計算が難しく,熱伝達機構に未解明な点が残されています。
沸騰熱伝達の冷却技術への応用のために,沸騰熱伝達機構を正しく理解して,
信頼性の高い数値計算技術や熱伝達モデルを構築することを目指して研究を行っています。
高分解能熱計測による沸騰熱伝達機構の研究
高速度赤外線カメラ,MEMS熱センサ,蛍光熱顕微鏡などを用いて沸騰を詳細に観察して熱伝達メカニズムを調べる研究に取り組んでいます。
平滑面上の水のプール沸騰では,気泡の運動が作り出す対流が壁面熱輸送に重要な役割を持っていることなどが明らかになっています。
沸騰や蒸発を観察するための新しい計測技術の開発も行っています。
沸騰の数値計算
沸騰における伝熱面上の入り組んだ気液構造を実験的に把握することは困難です。
そこで,沸騰熱伝達を数値計算して熱流動場を可視化し,その結果をもとに熱伝達メカニズムを調べています。
本研究は,Paul Scherrer Institute(PSI)の佐藤陽平博士との共同研究で,PSIで開発されたPSI-BOILと呼ばれるCFDコードを用いて数値計算を行っています。
沸騰熱伝達促進技術の研究
沸騰の熱伝達率を促進する技術の開発は工業的に非常に重要です。
沸騰媒体に界面活性剤を添加したり,伝熱面にマイクロ・ナノ構造を設けるなどして,熱伝達を促進する手法を研究しています。
熱伝達促進のメカニズムにも注目しながら研究をすすめています。
純水
界面活性剤水溶液
N. Io, R. Tamura, T. Tanaka, J. Nakamura, T. Yabuki, Int. J. Heat Mass Trans.,2023
ナノ熱分析技術の研究
独自に開発した自立マイクロチャネル型超高感度熱量計を用いて,単一細胞の熱量計測や,極微量タンパク質の相転移熱量を計測する手法を研究しています。