構造不規則系を舞台とした物性物理

主に液体をはじめとする構造不規則系の物性研究を行っています。
(主に実験的研究、データ解析手法開発など。)

流体金属の物性研究 (これまでの主な研究)

 周期表の大半を占める金属元素ですが、この金属も熱力学的条件を変化させることにより、固体から液体、さらには気体へと相転移を遂げます。融点付近の単純液体金属は 融解しても金属的性質を示し、原子配置の不規則性の影響はあるものの、ほぼ自由な電子ガス近似による記述が妥当であることが 知られています。一方、気体は絶縁体的振る舞いを示します。このように金属における気体から液体への相変化では、電子的性質の変化も同時に起こります。

 液体と気体の共存曲線には終点があり、臨界点と呼ばれています。 臨界点を迂回するように温度圧力を変化させると、一次相転移を起こすことなく液体から気体へと連続的に移り変わることが可能となります。 流体密度、電気伝導度も連続的に低下し、臨界密度付近で金属から絶縁体へと転移します。

 非金属化が進んでいく過程で、流体中の自由電子はいつ自由でなくなり、原子・分子へと局在していくのでしょうか。 逆に原子・分子はどのぐらい集まったら金属的になるのでしょうか。 研究室では、主に放射光X線散乱を手法として、流体中のイオンや電子の挙動を調べています。 共存線を迂回する過程は、連続的に変化する”密度”というスケールを導入することに相当します。密度スケールで それらの挙動を特徴付けることにより、臨界点近傍における金属状態の理解を進めています。

Liquid(Condensed) Phase
Atomic/Molecular Phase

これまでの主な研究 実験

X線回折

流体アルカリ金属の構造研究

X線小角散乱

流体アルカリ金属の構造研究

X線コンプトン散乱

流体アルカリ金属(Na, K, Rb, Cs)の電子運動量分布
液体シリコンの電子運動量分布
液体シリコンのプラズマ振動観測

X線ラマン散乱

液体アルカリ金属(Na,K,Rb,Cs)のプラズマ振動観測
液体Liの密度応答関数の観測
分子性液体の観測

測定手法

X線回折・散乱

回折による原子配置
コンプトン散乱による電子運動量密度
ラマン散乱による電子励起観測
原子集団運動(atomic dynamics)

試料環境形成

ガス圧縮式内熱型高圧容器

流体試料保持用セルの開発

データ解析手法の開発

測定データの新しい解析手法の構築